2013年10月13日

「検察意見書(2)病態論」に対する弁護団の反論(要旨)

 8月2日仙台地裁において、仙台筋弛緩剤冤罪事件の再審請求審の裁判官、弁護団、検察官による第6回三者協議が開かれました。
 この三者協議に先立ち、弁護団は7月23日、守大助さんが仙台地裁に提出した再審請求書に対する「検察側意見書(2)病態論に対する弁護団の反論」を提出しました。
 この「弁護団の反論」には、@ミトコンドリア病の認定基準、A池田正行医師(※1)意見書(以下、池田意見書)の2点の資料が添付されています。
 また弁護団は、志田鑑定人、池田鑑定人の尋問を実施するよう要請する証人尋問請求に関する意見を裁判所に提出しました。

●「検察意見書(2)病態論」に対する弁護団の反論(要旨)

1、再審請求書の新規性に疑問の余地はありません

 検察官意見書は、池田意見書には新規性がないとしていますが、白鳥決定後の「証拠の新規性」とは「その証拠の証明力の判断が裁判所によって未だなされていないこと」とされています。
 池田意見書は、確定審において判断を経てない事項、すなわち「神経内科学的視点から検討してマスキュラックス中毒といえるか」、「A子さんの全体的症状経過を説明できる病態はミトコンドリア病メラスであるか」、に関する新たな医学的鑑定であり、その判断未了性は明らかであり、新規性に疑問の余地はありません。

2、A子さんの症状、点滴前の腹痛と嘔吐、点滴後のすべての症状を説明できるのが、ミトコンドリア病メラスです

 検察官意見書は、A子さんの個々の症状は、ミトコンドリア病以外の原因でも生ずるからミトコンドリア病との診断には疑問があるという、およそ医学的診断の常識とは相容れないものです。
 池田意見書の第1部では、A子さんに認められた症状と検査結果について個別に詳細に検討し、これらがマスキュラックス中毒だけでは決して説明できないことを証明し、急性悩症だけが、すべてを合理的に説明できることを指摘していますが、検察官意見書はこれに対してなんらの反論をも行っていません。

3、A子さんの症状はミトコンドリア病認定基準の「確実例」に該当します

 ミトコンドリア病認定基準(1)として、主症候が@ABとして掲げられ、そのうちの1項目以上が基準とされていますが、A子さんは、Aの痙攣、ミオクローヌスなどに該当するとともに、Bの心筋症などの心症状にも該当し、基準をみたしています。
 ミトコンドリア病認定基準(2)として検査・画像所見が@ABCDとして掲げられ、そのうち2項目以上が基準とされていますが、A子さんは、@の「血清の乳酸値が繰り返して高い」とAの「脳のCT/MRIにて、脳梗塞様病変、大脳小脳萎縮像、大腸基底核、脳幹に両側対称性の病変などを認める」に該当しています。つまりA子さんは、ミトコンドリア病認定基準の「確実例」に該当します。
 なお、この認定基準を作成したのは、「ミトコンドリア病の診断と治療に関する調査研究班」であり、後藤雄一氏(※2)は研究代表者です。

4、後藤意見書はA子さんがミトコンドリア病である可能性を認めています

 検察官意見書に添付されている後藤雄一医師の意見書「A子さんがMELASであるという池田意見に対する意見」(以下、後藤意見書)は、A子さんが、ミトコンドリア病である可能性を認めています。
 後藤意見書には、後藤医師自らが作成したミトコンドリア病の認定基準については一言も触れられておらず、さらに「これらの症状がミトコンドリア病で説明可能という点は否定しません」と明記されており、ミトコンドリア病に代わる診断名をなんら示していません。

5、次回三者協議の期日は、9月9日(月)午後5時からです

 次回期日までに、弁護団側は、検察官意見書(1)添付資料14「鑑定書」等に対する疑問点について回答を求める文書(求釈明)を提出します。この「鑑定書」は、2012年11月6日から12月7日にかけて、宮城県警科捜研が、再審請求書の志田意見書の鑑定と「出来る限り同様の方法で行った」 とされるもので、このなかで、臭化べクロニウム標品から、m/z279イオンとm/z258イオンが検出された、とされているものです。
 また検察官側は、弁護団が提出した「証人尋問請求に関する意見」に対する意見がある場合、これを提出することになっています。
 いずれも、再審請求審の今後の展開にとって重要なもので、裁判所がどのような判断をするのか、とあわせて、次回、次々回の三者協議が注目されます。

(※1)池田正行医師の経歴
 前長崎大学医歯薬学部総合研究科教授
 現香川大学医学部附属病院情報部客員研究員
 米国内科学会会員
 日本内科学会認定総合内科専門医
 日本神経学会認定神経内科専門医
 NHK総合「総合診療医ドクターG」(2011年より3年連続)
 厚生労働省 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議Working  Group委員
 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 専門委員

(※2)後藤雄一医師の経歴
 独立行政法人国立精神・神軽医療研究センタ一
          神経研究所疾病研究第2部長
          病院遺伝カウンセリング室臨床遺伝専門医・指導医



posted by mori-daisuke at 15:13| 裁判資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする